上を下へのジレッタ 台詞書き起こし(一幕)

妄想歌謡劇「上を下へのジレッタ」の台詞の書き起こしです。
メモは取っておらず、ひたすら自分の記憶頼みで書きました。あいまいだった部分は不自然にならないように創作してつなげてます。ご容赦ください。

尚、劇中歌については「あったほうがイメージや流れを思い描きやすいかな」と個人的に思う部分を抜粋してます。また、トラック番号はパンフレットに準じてます。(M04・M06は存在せず)
場面設定については原作も参考に。


私の記憶やイメージ(あと好み…)が多少強く反映されておりますが、脳内再演にお役立ていただければ幸いです。




<開幕>

M01 虚構の共犯者

煌びやかなコートを身にまとい、舞台中央に佇む一人の男

一億人に約束された 明るい未来
一億人にもれなく当たる 明るい未来

メロディーの展開に合わせて男が手を広げる
倒れる書き割り
コートを脱ぎ捨て、黒いスーツに身を包んだ男=門前一郎が現れる

すべてまやかし すべては虚構
「それが何?」とあなたは言う
「上手に騙せ」とあなたは言う
見事 叶えて差し上げましょう
生まれついての大嘘つき
稀代の詐欺師 電波マジシャン
指が鳴ったら 目を開け
望みどおりの 虚構の世界
望みどおりの 虚構の世界

AD、門前にインカムを渡す
AD「ディレクター、本番です!5秒前、4、3、2………」

組織ぐるみの 大嘘つき
飛ばせ 電波で まやかしを

   * * *

望みどおりの 虚構の世界
望みどおりの 虚構の世界

AD「CMです…!」


(BGM:虚構の共犯者)
プロデューサー「おいおい門前、まずいぞ今のオープニング!なんだって竹中プロのタレントをあんな端っこに?!」
門前「説明するまでもないでしょう!」
プロデューサー「ほらほら竹中社長が来たぞ、はい、ペッターーン(ジャンピング土下座)」
竹中「説明してくださるかしら!」
秘書「本番中に立ち位置が変わった理由です!」
門前「おたくのタレントがあまりにも見苦しいからどいてもらったまでです」
竹中「見苦しい?うちの子が?」
門前「テレビは常に現実離れしたものを提供しなくちゃならない。なのに、あんな近所の娘でもできるような歌と踊りをやられたら…」
竹中「それを現実離れしたものに見せるのがあなたがたの仕事じゃなくて?」
門前「せめてガラスならダイヤに見せてやれないこともないですが、しかしその辺に転がってる石ころじゃ、何をやっても石ころでしょ!」
竹中「それはあなたが、無能、だからじゃないの?」
門前「無能…?この俺が?」
竹中「今すぐこの仕事をやめた方がいい。そうでしょう?」
プロデューサー「こいつをクビにしろと…?いや、でもこいつは生意気ですが才能のあるやつでして…」
竹中「今すぐこの男を切らないなら、おたくの番組からわが社のタレントをすべて引き上げます!」
プロデューサー「門前、貴様はクビだ!」
門前「………え?!」
竹中「結構!」

リエの部屋

リエ「番組見たわ。竹中プロを怒らせなくてもクビだったかもね」
門前「また一から出直しだ」
リエ「大丈夫よ、あなたなら」
門前「いい機会だ。リエ、お前とも離婚しよう」
リエ「(飲み物を噴きだす)な、なにがいい機会なの?!」
門前「でかいことを始めるにはでかい犠牲が必要ってことさ。ほら、これにサインを」
リエ「すでに離婚届まで…!」
門前「すでにサインもしてある」
リエ「………逆らっても無駄ね。あなたの決めたことなら」

(電話のコール音)
門前「はい、門前」
プロデューサー『聞いたか門前!この間の視聴率、ビデオリサーチで52%行ったらしいぞ!』
門前「それで?」
プロデューサー『それで、って…社長が今すぐお前に会いたいそうだ!』
門前「会う理由がないねぇ。俺はもうクビになったんだから!」

リエ「なにかで読んだんだけど、アメリカにオーソン・ウェルズって俳優がいてね。彼は天才過ぎて仕事も結婚も上手くいかなかったんですって。きっとあなたもそうなんだわ…」
門前「サインはしたか」
リエ「……まただれかと結婚するつもり?」
門前「さあねぇ。どうせ結婚したって長続きしないだろうよ」


編集者「お疲れさまです、小説ブンチョウです!原稿の催促に参りました!」
門前「…まずいぞ!リエ!口述筆記だ!!」
リエ「いやよ。私もうあなたの奥さんじゃない!」

門前「銀座に着いためぐみは、来るとも来ないともしれぬ高橋を思い夜空を彩るネオンを見上げた。そうしていると自分がまるで………ペラペラペラペラ………ペラペラペラペラ………、『信じていいの?』めぐみはそう呟いた。つづく…!」

リエ「~~~悔しい!いつものクセで速記しちゃったわっ」
門前「ご苦労」
編集長「玉稿承ります。しかし先生はタフですな!テレビの演出をしながら小説に評論、エッセイまで書かれて」
門前「それより、おたくの雑誌社は芸能に強かったよな?なにか竹中プロに関する情報はないのか?」
編集長「竹中プロ?そういえば…春海なぎさって歌手をご存じですか?」
門前「春海なぎさ…?あの覆面で活動しているやつか」
編集長「なんでも、竹中社長は最近その春海なぎさをクビにしたらしいですよ」
門前「理由は?」
編集長「さぁ、そこまでは…。それでは次号もよろしくお願いいたしま~す」

門前「春海なぎさねぇ……」
リエ「竹中社長に復讐でもするつもり?」
門前「コケにされたままじゃいられねぇだろぉよ!」
リエ「わかるわ!その気持ち。私も同じだから。……執念深いのよ?」
門前「……この部屋とここにあるものは全部やる。お前の好きにしろ。じゃあな、もう二度と会うこともないだろうよ!」


リエ「会うわよ。きっと………」

スタジオ

ピアノの椅子に座って人を待つ門前

なぎさ「ごめんください」
門前「よくきてくれた。入りたまえ」

なぎさ「失礼いたします」
門前「…………き、きみが?!」
なぎさ「はい、春海なぎさです。本名は越後きみこと…」
門前「どうでもいいよ!!君か、覆面で活動していたっていうのは…」
なぎさ「はい!私、人前で歌を歌うときはこういうのをつけていまして」
門前「納得だよ…!」
なぎさ「どういう意味ですか?!」
門前「それで、竹中プロをクビになった理由は?」
なぎさ「はい…私の田舎でリサイタルがあったんです。私がアイドルになった姿をどうしてもお父ちゃんに見てもらいたくて、それで覆面を…」
門前「取ったのか…?」
なぎさ「はい。そしたら不思議なことに、会場中が笑いに包まれて…」
門前「不思議でもなんでもねぇな」
なぎさ「その日のうちにクビになりました…」
門前「………君、整形する気は?」
なぎさ「アッハッハ、なに言ってるんですか?」

と、なぎさは笑いながら門前の肩を叩く
あまりの力に吹き飛ばされる門前

なぎさ「私、こう見えてもミス丸太ん棒なんですよ!」
門前「なんじゃそりゃ?!」
なぎさ「うちの田舎にある伝統的なミスコンです。道端でこう、丸太のように立って、五日間飲まず食わずで声をかけてきた男性の数を競う、っていう…」
門前「君に言い寄る男なんていたのかよ」
なぎさ「いたもなにも!ダントツの54人ですよ!」
門前「数え間違いだろ!」
なぎさ「間違ってません!」
門前「まぁいい。とにかく、歌を聞かせてくれ。ここに君が出したシングルの譜面がある」
なぎさ「…それより、なにか食べさせてくれませんか?私、お腹が空いて…」
門前「テストが済んだら食わせてやる」
なぎさ「失業してから何も食べてないんです…!」
門前「さぁどれを歌う?!」
なぎさ「出前を取ってください!」
門前「ああもうこれでいいや!『黄昏のフィナーレ』!」
なぎさ「おそばかラーメンで結構ですから!…―――」

M02 黄昏のたぬきそば

門前「……お前はいったい何の歌を歌ってるんだ?!」
なぎさ「何か食べさせてくれたらもっと上手に歌えます!」
門前「はい、二番!」
なぎさ「待ってください!私もう、ふらふら…―――」

歌を歌いきったところで立っていられなくなり、倒れるなぎさ

門前「………ぁあ~~~~~!!き、君………?!」
なぎさ「これくらいでご勘弁を…!」
門前「どういうことだその顔はーーーー!?」スライディングして顔を覗き込む
なぎさ「また顔の話ですか?!」
門前「だってまるで別人だぞ?!ちょっと待ってくれ……」
なぎさ「もう贅沢は言いません、お水でいいから飲ませてください……」
門前「…!ミス丸太ん棒!!」
なぎさ「はいぃ!」
門前「………そのときも腹は空いていたのかね?」
なぎさ「そりゃ、五日間飲まず食わずで立ちっぱなしでしたから……」
門前「からくりがわかってきたぞ。つまり君は腹が空くと美人になる。そのことを竹中プロは知らなかったわけだ。雇われている間は曲がりなりにも食えていたわけだからな」
なぎさ「お水…勝手にいただきます……」
門前「ちょっと待て!」
なぎさ「いいじゃないお水くらい!!」
門前「………俺と契約しよう、なぎさ」
なぎさ「雇ってくれるんですか!?」
門前「となると芸名が必要だな。そうだな………“小百合チエ”ってのはどうだ?」
なぎさ「アッハッハッハ!」
門前「なにがおかしい!」
なぎさ「すみません…」

(BGM:虚構の共犯者)
門前「俺にまかせろ、小百合チエ。この門前一郎が必ずお前をトップスターにしてやる」

門前プロ設立記者会見

門前「えー、このたびワタクシ、門前一郎は、芸能事務所門前プロを立ち上げました!そのご披露も兼ねて、弊社の所属タレントである小百合チエを紹介いたします」
チエ「小百合チエです」

記者一同、驚嘆の声を上げる

記者「すごい美人だ!」
記者「門前のやつ、竹中プロに対抗すると聞いたときはどういうつもりかと思ったが…」
記者「これはひょっとして、ひょっとするわね…!?」
チエ「どうぞよろしくお願いいたします!」
(お腹の鳴る音)
記者「………何の音だ??」
門前「会見は以上です!失礼いたします!」

慌てたようにチエを連れ出す門前

記者「待ってください!一言お願いいたします!」
門前「…うちはタレントを安売りしませんよ。初めから大勝負に出るつもりです。例えばそう…ブロードウェイのジミー・アンドリュウスと共演させるとかね!」

記者一同、一斉に笑い出す

門前「なにがおかしいんですか」

竹中「あっはっはっは!」
門前「…いらしてたんですね、竹中社長」
竹中「これがおかしくないってんなら、あなたは正気じゃない!」
門前「どういう意味です?」
竹中「あのジミー・アンドリュウスが日本の無名タレントと共演するわけがない!」
門前「どうしてそう言い切れるんですか」
秘書「我が社ですら相手にしてもらえないんですから」
竹中「余計なこと言わなくていい!!」
門前「それはあなたがたが、無能、だからじゃないですか?」
竹中「な…!」
門前「では失礼」

竹中「あのド素人め!見てくれだけでスターになれるほど、芸能界は甘くはないわ!」

門前プロ事務所

門前「尻を突き出せ!尻を!胸をぐっと寄せろ!それで腹を黙らせろ!!」
チエ「だったらなにか食べさせてください!」
カメラマン「はい!笑って~。最高の仕事ができました!」
門前「すぐに現像してくれ。一刻も早くアメリカのジミーに送るんだ!」

急いで現像に向かおうとするカメラマンと助手
カメラマンが扉に手をかけたとき、勢いよく扉が開く
倒れるカメラマン

山辺「キミちゃ~~ん!!」
チエ「オンちゃん!!」
門前「知り合いか?いや、そんなことより早く現像だ!!」

小ボケをかますカメラマンと助手

門前「……何やってるんだ、さっさと行けよ!」
山辺「キミちゃん、ほら、これを着な」
チエ「オンちゃん優しい…!でもいったいどうしてここが?」
山辺「テレビでキミちゃんの記者会見を見たんだ」
門前「いったい君は誰なんだ?!」
山辺「俺が誰か知りたいって?俺の名前は…山辺音彦だ!」
チエ「私の田舎の幼なじみなんです!一緒に夢を追いかけて上京してきたんです」

M03 食うか飢えるか

山辺「お前がキミちゃんを虐待しているのは一目でわかったよ。こんな貧相な顔になっちまって…」
チエ「見苦しい姿を見せちまってごめんよ」
門前「見苦しいのは元のツラだよ」
山辺「俺は元のキミちゃんの顔が好きだ!」
門前「そっちが好きなのは日本中で君だけだ!」
山辺「なに…!?」
門前「…そろそろインタビューの記者が来る。外でケリをつけようじゃないか」
山辺「望むところだ!」
チエ「さむッ!待って、センセイ!オンちゃん!」
山辺「待ってなキミちゃん。戻ってきたら、二人で腹いっぱい飯を食おうな」
チエ「待って、オンちゃん!オンちゃん…!」

ビル工事現場

(BGM:決闘のテーマ)

山辺「いったいどこまで歩かせるんだ!もうここで決着をつけようじゃないか!」
門前「だってここはビルの工事現場じゃないか!」
山辺「いいか、良く聞け!俺とキミちゃんはなぁ!」
門前「婚約してるんだろ。だが二人して金がない。だったら大人しく彼女の成功を待ちな!」
山辺「ばっかやろう…!俺はなぁ―――……!!」
(けたたましい重機の音)
山辺「ウィーーンガション、ってなぁ………さぁ、返事を聞かせてくれッ」
門前「…すまない。まったく聞こえない…」
山辺「こっの野郎…!いいか、もう二度と言わねぇぞ!俺はなぁ―――……!!!」
(再び重機の音)
山辺「ウィーーーンガシュン………さぁ!答えを聞かせてくれ…!」
門前「……すまない。もう一回頼む!」
山辺「ふっざけやがって…!この野郎~~~」
門前「いや、だって音がさ!」
山辺「待ちやがれ門前~~~~!」

門前、殴り掛かってきた山辺を避けながら工事現場の階段を駆け上がる
追いかける山辺

山辺「おま、やり過ぎだぞ…?!」
門前「何もやってねぇよ!ちょ、落ち着いて話をしよう、な…?くっ…離せこの……!離せって………ッ!」

もみ合ううち、門前に突きとばされた勢いで足場から落下する山辺

山辺「うわぁ~~~~~」
門前「や、山辺?!山辺ーーーーーーー!!!!!」

作業員1「アンタ、こんなところにいちゃあぶねぇよ」
作業員2「万が一、このすごーーーく深い穴に落ちてしまったら命がねぇ」
門前「…命が?!」
作業員1「ああ。だから今から塞ぐんだよ」
門前「塞ぐだって?!」
作業員2「なんだい。アンタ、このすごーーーく深い穴に何か落としちまったのか?」
門前「いや別に…」
作業員1「そうかい。そいつは、すごーーーーくよかった。くれぐれも落とさねぇようになぁ。自分だけは…」


門前「………山辺が死んだ。俺はいったいどうすれば………。いやいや、死体は見つからない。穴は塞がれちまうんだ!哀れ山辺音彦は行方不明ってことになる。………いやちょっと待てよ、チエはどうする?!彼女だけは俺と山辺が一緒にいたことを知っている…!チックショー!どうする、門前………」

ナレーション『そうして悶々と過ごしつつ、一週間が経ったある日のこと―――』

(電話のコール音)
門前「はい門前。……なに?アメリカのジミー・アンドリュウスが?!チエに食いついたか!!」

ホテル

M05 Fake Star

世界の踊り子を従えて歌うジミー

門前「信じられるか、チエ。あのジミー・アンドリュウスがお前に会いに遥々アメリカから日本にやってきた。」
チエ「あの薄っぺらい外人が…?」

マネージャー「気をつけろジミー。テープと口が合ってないぞ!」
ジミー「シッ!」

You are just a Fake star!
   * * *
そうよ Fake star! 偽りの美貌
そうさ Fake star! 偽りの美声
お腹が空いてる間の
テープが回る間の
期間限定の栄光

マネージャー「ナイストゥーミーチュー、ジミーのマネージャーです」
門前「門前です。ご覧なさい、すっかり意気投合したようです」

You are just a Fake star!

マネージャー「機材トラブルだ…!」
門前「機材?」

チエ「どうしたのかしら…」
門前「お前こそどうした。その陰気な顔は」
チエ「そりゃだって、オンちゃんが…!」
門前「あいつのことはもう忘れろ。スナックのホステスと駆け落ちなんて薄情な奴じゃねぇか。そんなことより今はジミーだ!世界的スターである彼に気に入られれば……って、おい!お前、食うなーーーー!!」

ジミー「おい。チエは。チエはどこに行った?!」
マネージャー「喋るな!機械が直るまで一切声を出すんじゃない!」
ジミー「まだ直らないのか…!!」

門前「……~~~チックショーーー!」
チエ「すみませぇん…」
門前「走れ!今すぐホテル中を走って腹を空かせるんだ!!」

Oh Oh Oh Fake star! 偽りの名声
Oh Oh Oh Fake star! 偽りの喝采

   * * *

独り歩きのFake star
Fake star Fake star


ビル工事現場 地下

ナレーション『一方、あの山辺音彦はどうなったのか…?ビルの工事現場に落ちて60日間が経過した今も、彼はまだ、生きていた―――!』

山辺「………くそ………今日こそ出口を見つけてやる………俺はこんなところで死ぬわけには………――おや、こんなところにボタンが……?『ご用のある方はボタンを押してください』…!あるよあるよ!ご用!」

上へ上へと続く長い階段が出現

山辺「うわぁぁ!なんだ…!?あれが出口か…?!」
(階段を下りてくる足音)
山辺「だれか下りてくる!あれは………俺?!」
山辺’『ああ、俺だ。』
山辺「いったいこれはなんなんだ、説明しろ!……おい、落ち着きがないぞ俺!」
山辺’『いやだって柱が邪魔で………』
山辺「柱?だったらどけてやるよ。お願いしまーす」
山辺’『おい!いいのか、このビルを支えてる柱なんじゃ…?!』
山辺「話を逸らすな、俺!いったいここはどこなんだ!」

山辺’『ここは……ジレッタさ!』

山辺「ジレッタ?ジレッタってなんなんだ?!説明しろ!」
山辺’『説明している時間はない!カウントダウンはもう始まってるんだ!』

浮かび上がる「5」の数字

山辺「…って数増えちゃってるじゃんかよ!」
山辺’『うあ~~~もうダメだ!』
山辺「おい、いつになったらダメなんだ?!」
山辺’『わからない!』

数字が「17」までカウントアップしたところで爆発
消飛ぶ山辺

山辺「ジレッタについては、爆死した俺に代わって生き残ったこの俺が」

M07 ジレッタ1

山辺「ナレーション!」
ナレーション『そう、山辺音彦はこのジレッタという妄想世界に入り浸ることで、かろうじて生きながらえていたのである』

バッグダンサーの女性たちと順にハイタッチをかわす山辺
チエが現れ、恨めしそうに山辺を見る

山辺「うぉ、き、キミちゃん!どうしてここに?」
チエ「センセイが、良心の呵責に耐えかねて教えてくれたのよ!」
山辺「門前が…?信じらんねえな」
チエ「でも無駄足だったみたいね。私はあんたのハーレムに加わるつもりはないわ!」
山辺「それは誤解だよキミちゃん!彼女たちはさすがに俺のソロだけじゃさみしかろうと厚意で集まってくれただけで…」
チエ「さ よ う な ら !」
山辺「ちょ、誤解だよキミちゃん!知ってるだろ?俺にはキミちゃんしか……」
チエ「私、今にも嫉妬の炎で燃えてしまいそうよ…!」
山辺「ちがうよキミちゃん…ってアッチィ!キミちゃんほんとに燃えちゃってるよ!」
チエ「今にも炎上しそう…!!」
山辺「キミちゃん!キミちゃんーーーー!!!」

たまに火だるま! そして水中!
時に台風! 無事に乾燥!
快適!

(銃声)
山辺「だれだ?!俺を狙撃したやつは…」

背後よりライフルを肩に担いだ門前が現れる

山辺「門前?!貴様…おい、逃げるな!」

ニセ門前1「ハッハッハー、俺ならここだ!」
山辺「瞬間移動…!って待ちやがれ!」
ニセ門前2「ハッハッハー、俺ならここだ!」
山辺「………意図がわからない。おい!」
ニセ門前3「ハッハッハー、俺ならここだ!」
門前「ハッハッハー、俺なら…」
山辺「おい出てきちゃってんじゃねえか!ずさんだぞ!」
門前「ハッハッハー、俺ならここだ!ここだぞー?」

ニセ門前3が山辺を殴り、一度退散する門前たち
山辺、追いかけようとするが再び現れた門前たちにボコボコにされる

山辺「ち、ちくしょう……門前……いや、門前たちめ………」

【つづく…】


山辺「………うん。今回の出来はまあまあだったな。しかしジレッタに出てくるのはすべて、俺の過去の漫画のアイディアだ」
(頭上から鳴り響く重機の音)
山辺「………ん?この音は…レスキュー隊か?!おーーい!俺はここだ!ここにいるぞ!………まさかこれも、ジレッタか………?」

記者会見後

記者「小百合さーん!」
記者「小百合さん、一言お願いいたします!」
記者「ジミーとのご関係は?!」
門前「会見で話した通りです。小百合チエのデビューコンサートは正月二日。客演は、ジミー・アンドリュウス!」
記者「ジミーが出演を承諾した理由は?!」
門前「シンパシーです。二人の間にはシンパシーが生じた、とでも申しておきましょう」
記者「小百合さん!なにか一言お願いいたします!」
チエ「お腹が空いた………」
門前「…さぁ、もう通してください!」

記者の追及を逃れ、室内に入る二人
門前、チエを抱きしめる

門前「やったなチエ!俺たちとうとうここまで…!」
チエ「…………」
門前「ん?どうした。まるで風船を抱いているようだぞ」
チエ「だって!もう三日も何も食べてないんですよ!」
門前「許してくれチエ。お前の努力には頭が下がるよ……しかしこれも、お前をスターにするための試練だと思ってくれ」
チエ「スターになる前に餓死してしまいます!」
門前「おっと!そろそろ記者会見の映像が流れる時間だな…フフン」

上機嫌でテレビのスイッチを入れる門前

アナウンサー『次のニュースです。今朝、東京都港区の工事現場の地下から一人の男性が救出されました。―――……』

チエ「良かったわねぇ」

アナウンサー『男性は3か月もの間閉じ込められていたものと―――…』

チエ「3か月も?!ビルの地下で、ご飯はどうしていたのかしら?」
門前「………ヤツだ」
チエ「え?」

門前「山辺のヤツが生きていた……意識が戻ったら、きっとあの晩のことを話すに決まっている。俺のことも、小百合チエの正体も。どうする門前……?!あ~~~チックショーッ!!成功はもう目前だっていうのに……ッ!」

正月二日 小百合チエのデビューコンサート

M08 偽りの代償

ジミー「さあ、君の出番だ。プリンセス・チエ。」

チエを抱き寄せ、キスをしようとするジミー
朦朧としたチエはジミーの舌にかぶりつく

門前「やめろチエ!ジミーの舌は食い物じゃない!!」
マネージャー「おい、大丈夫かジミー!?…なんてキスだ!!」

食われた!
何かが喉に……
スピーカー!
飴玉かしら

門前「飴玉?!」

Keep on lying. 君が見つめているうちは……
Keep on lying. 君から名を呼ばれるうちは……
聴き覚えのある甘い調べ
Keep on lying.
「お腹?」 私のお腹から!
「吐き出せ!」
何を?
止めろ!
どうやって?
止まらん! 「故障だ!」
なんでもいいから止めてこい!
歌おう地声で それだけはやめてくれ

   * * *

止まったわ!
またその顔か!
お水をたらふく飲んだから
その顔で
その声で
ステージに立った途端に 魔法が解ける
魔法をかけて 魔法をかけて
誰か私に 解けない魔法を!

(機材が爆発する音)
マネージャー「もう引き上げよう、ジミー!」
ジミー「それじゃ契約違反だろ?!」
マネージャー「こんなところでお前のスター人生を終わらせるわけにはいかない!!」

門前「5分で元に戻れ。それまではなんとかジミーに繋いでもらう。なあ、ジミー!……ジミー?おい、ジミー。どこ行った?!ジミー!!」

ジミーの姿はもはやなく、一人立ち尽くす門前
ジミーのファン、チエのファンが次々と現れ、門前を批難する
逃げ場もなく追いつめられる門前
背後より竹中プロが現れる

頂点までの 長い旅路をあざ笑う
一瞬のうちに起こる 無情な転落
一度貼られたレッテルは 簡単には剥がせない
真っ暗闇の奈落の底
降り注ぐ石 投げ返すには深すぎる
お前は二度と這い上がれない

やめろ……やめてくれ!

激しく責め立てる声
門前「違う……ちがうんだ……!」

責任を果たせ! 責任を果たせ!


リエの部屋

ソファに崩れ落ち、茫然自失の状態の門前

リエ「そろそろ来るころだと思ったわ」
門前「お前も俺を嘲笑(わら)ってるんだろ」
リエ「私を他の連中と一緒にしないで」
門前「俺の周りにはもうだれもいない………」
リエ「………あなたはね、トカゲみたいに、身体の一部を切られても、またすぐに前より立派なものが生えてくるの。この部屋は、それまでの巣みたいなものよ」
門前「……さ、さすがによくわかってるな。俺はまだまだこんなものじゃない!この程度の挫折じゃ、かすり傷一つつきやしねぇんだ!」

リエの手を取り、引き寄せる門前
キスを交わそうとするが、電話の音に阻まれる

リエ「はい。…ええ、いますけど。あなたによ、大学病院から」
門前「病院…?はい門前。……えっ?!はい!わ、わかりました、すぐに伺いますから!」
リエ「これ以上まだ何か…、待って!置いてくつもり?唯一の味方を」
門前「…お前も着いてきてくれ」
リエ「行先は?」
門前「ビルの工事現場だ」
リエ「工事現場…?」

ビル工事現場 地下

医者1「病院で容体が急変しましてな。試しにここに戻したところ、容体が安定したというわけです」
医者2「そもそも不思議なのが、彼が3ヶ月もの間、飲まず食わずどうやって生き永らえたのかということです」
医者3「それもこの場所にな秘密がありそうです」
医者1「なにかあるとすればこの鉄柱です。彼はこの鉄柱の近くに来ると決まって容体が安定する」
門前「………それより、どうして俺が?こんな男に見覚えは……」
医者1「それは、彼の妄想に決まってあなたが登場するからです」
門前「妄想…?」
リエ「ちょっと待って!彼がどんな妄想をしているかなんて、どうしてわかるっていうの?」
医者2「それがわかるんです」
医者1「さ、お二人ともこれを…」

医者たち、門前とリエにあるものを渡す

門前「聴診器…?」
医者1「それを彼の胸に当ててごらんなさい」
医者2「さあさあ、騙されたと思って!」
リエ「すごくいかがわしいわッ」
医者3「けして損はさせませんから~!」

訝しみながら、山辺の胸に聴診器をあてる門前とリエ

医者2「そうそう、なるべく頭をからっぽに!」
医者1「余計なことを考えると、ジレッタに反映されますぞ」
門前「ジレ…ッタ……?」
リエ「なんだか…お医者さんごっこみたいだわ……」

(BGM:ジレッタ電子音)


~~ジレッタ~~
砂漠にサボテン、太陽…と西部劇の世界のような場所

門前「どこだここは…?!」
リエ「きゃ!見て、あれ!」
門前「………馬?!」

M09 ジレッタ2

リエに襲い掛かる馬の集団

リエ「きゃー!」
門前「やめろ!俺の女になにするつもりだ!」
馬「お医者さんごっこだ!」
門前「ハ?」

リエを患者に見立てお医者さんごっこを始める馬たち

リエ「きゃーーー!やめて!!」
門前「リエーーー!!」

馬に乗った山辺とチエが登場
山辺、二丁の拳銃を無造作に打ちまくり馬の集団を追い払う

リエ「助かった…」

俺は保安官 ジレッタの保安官
ジレッタの和を乱す者は許さない
私のオンちゃん ジレッタの英雄
私たちジレッタ1の美男美女

山辺、門前に向けて一丁の銃を放る

門前「……どういう意味だ」
山辺「取れ、門前!」
リエ「決闘…?!」
チエ「男なら拳銃を取りな!」
リエ「やめて!」
門前「いいさ!こいつとはいずれケリをつけなくちゃいけないんだ」
山辺「よく言った。さあ、来い!」

山辺の挑発に乗り、銃を拾い上げる門前
警戒しながら山辺に近づき、振り向きざまに銃を向ける
二発の銃声

門前「う゛!あぁ!………ェエ?!」
リエ「馬が、撃った」
山辺「勝った!」
リエ「撃った、馬が…」
山辺・チエ「アーーーハッハッハッハ!!!」

馬の凶弾に倒れる門前

リエ「ひどいわ!馬なんかに……馬なんかに………!!」

【つづく…】


医者たち、門前とリエの耳から聴診器をはずす
(BGM:ジレッタ電子音)
医者1「おわかりいただけましたかな」
門前「さっぱりわからない!」
医者2「彼の妄想を体験することができたでしょう?」
リエ「今のはいったいどういうことなの…?」
医者1「調べたところ、この鉄柱は東京中の騒音の中から特殊な超音波を吸収し発しているようでして」
医者3「その超音波が彼の脳を刺激し、とんでもない妄想世界を生み出しているのではないかと」
門前「でも、どうしてそれを俺たちが…」
医者2「それは、彼の精神波が強いからでしょう」
医者3「妄想中、彼は仮死状態になる。それで3ヶ月もの間飲まず食わずで生き永らえることができたというわけです」
医者1「我々はこの妄想世界を“ジレッタ”と呼んでおります。彼があちらの世界でそう説明するからです」
医者1・2・3「ここは、“ジレッタ”だと」

門前「ジレッタ………」

夜の公園

噴水の前のベンチに腰掛ける二人

門前「リエ。お前ならわかるな?俺が今なにを考えているのか…」
リエ「ジレッタね」
門前「その通り」
リエ「でもあんなもの使って、いったいなにを…」
門前「今度の仕事は芸能界なんかとじゃスケールが違う。門前一郎、一世一代の大博打だ」

M10 野望と現実のはざまで………

門前「……つまりなにか。君ほどの女が、あの田舎娘に妬いているとでもいうのか」
リエ「認めるわ。あの小百合チエのほうの顔に、たまらないほど妬いているの。いい?あなたがあの女と別れない限り、私はあなたと組むつもりはないわ」
門前「…わかったよ」
リエ「言ったわね?」
門前「きっちり別れてやるから。お前は、俺のそばにいろ」
リエ「………今夜は楽しかったわ。またね」


門前「勝ち誇ったような顔しやがって。悪いがこっちは女の嫉妬に付き合っている暇はない。まずは資金集めをしないとなァ。使いきれないほどの金と、えげつない功名心を持ったスポンサーを探すんだ!」

M11 Mr. Yesman

有木「テキーラアミーゴ!ずっこんにちは!わたくし、日本天然肥料の有木足と申します!(有木足!)日本天然肥料!(日本天然肥料!)略して、日天肥!(日天肥!)さんはい!」

Hey! Mr.Yesman! (Oh, I am a Yesman.)
Hey! Mr.Yesman! (Oh, I am a Yesman.)

有木、太鼓持ちと腰巾着を引き連れて登場
品定めするような目で有木を見つめる門前

「ちょうどいいのが現れた」
殺し文句は『先駆者』『草分け』『パイオニア

Hey! Mr.Yesman! (Oh, I am a Yesman.)
Hey! Mr.Yesman! (Oh, I am a Yesman.)

【つづく…】


ビル工事現場 地下

山辺に聴診器をあてている有木(Mr.Yesmanは実はジレッタ)
門前、静かに有木に近づき、聴診器をはずす

門前「いかがでしたか、社長」
有木「あーなんかすっげーテンション上がっちまった………、いったい私は!?」
門前「これがジレッタです」
有木「君…!これは大当たりするぞ……!!」
門前「お力添えをいただけるなら、社長がジレッタ界のパイオニアということで」
有木「この私がパイオニア…!よーし、やろう!門前君!!」
門前「社長~!」
有木「私を男にしてくれ、門前君!」
門前「それはこちらの台詞ですよ!」
有木「来い!門前君!!」

抱き合う門前と有木
とそこへチエが現れ、変わり果てた山辺の姿に悲鳴を上げる

チエ「いやぁ~~~~~~!!!」
門前「チエ!お前どうしてここに…」
チエ「どけ~~~~~!!」
門前「うぉッ!!」
チエの一撃で吹き飛ぶ門前
門前「死ぬぞーーー!!」
チエ「死ぬーーーーー?!」
門前「下手に動かせば死ぬ。彼は今、生死の境を彷徨っているんだ!」
チエ「そんな…」
有木「ちょっと待て。ジレッタの大元は死にかけているのか?!」
門前「あ、いや…」
有木「そんな将来性の欠片もない事業に、協力はできんぞ!」
門前「それは社長、あの…」
チエ「事業…?いったい、どういうことよこのオヤジ!!」
有木「オヤジ…!」
門前「オヤジはまずいだろお前…ッ」
有木「門前君!!」
門前「ハイ!」
有木「……今すぐこの美女を私に紹介したまえ!」
門前「それはまた改めてしますから!………リエか。お前にこの場所を教えたのは、あの女だな?!」
チエ「どうしてオンちゃんがこんなことにぃ?!」
門前「そ、それは……事故に遭ったんだ」
チエ「事故?!」
門前「しかし悲しむのはまだ早い。彼はいつも心の中で君のことを想っているんだよ」
チエ「どうしてそんなことがセンセイにわかるんですか?!」
門前「証拠を見せよう。これを彼の胸にあててごらん」
門前、チエに聴診器を渡す
チエ「………センセイ。いくら私がバカだからって、こんなものでオンちゃんの気持ちが見えないことくらい…」
有木「言われたとおりになさい。後で私が、ワイハーに連れて行ってあ、げ、る、か、ら!」
チエ「見ず知らずのオヤジとハワイなんかに行きたかないわよ!」
有木「な…ッ!」
門前「つべこべ言わずさっさとやれ!!」
チエ「…命令ばっかり。ワンマン社長のもとのタレントは惨めだわ……」

チエ、山辺に聴診器をあててジレッタの世界へ

門前「………どうやらジレッタに入ったようです」
有木「いったい彼女は何者なんだね?!」
門前「山辺をフィアンセと思い込んでる頭のおかしいヤツです」
有木「この男がフィアンセ?!羨ましい男め~~」
門前「実際はそうでもないですよ」
有木「どういう意味だねそれは?」
門前「いや………そんなことより、社長の会社日天肥は、来る万博にパビリオンを出展する予定がおありだとか?」
有木「左様!我が社、日本天然肥料は、世界中のトイレが一堂に会する、トイレ館を建設するのじゃ~!」
門前「いやいやトイレ館って…」
有木「笑った?」
門前「あ、いえ……トイレ館も素敵ですけど、ここは一つ、ジレッタで勝負してみてはいかがでしょう!?」
有木「ジレッタ館か…!」
門前「その通り!」

門前、チエの耳から聴診器をはずす
ハッと我に返るチエ

チエ「あれ?私は…」
門前「俺の言っていたことは間違ってなかっただろう」
チエ「不思議な場所で、オンちゃんが私に言ってくれました!俺が愛するのは君だけだ、腹いっぱい食べるがいい!って」
門前「本当にそんなこと言ってたのか?」
有木「よ~し、決めた!トイレ館は撤回!世界中の注目が集まる万博で、ジレッタお披露目といこうじゃないか!」
門前「社長~!」
チエ「ジレッタってなんですか?さっきオンちゃんも同じことを言っていました」
門前「チエ、お前の彼氏はとんでもない才能を持っていたぞ。これからコイツは、いや彼は、前代未聞の大成功を収めるんだ―――!」

M12 ハロー・ジレッタ

ハロー ジレッタ
「港区地下生まれの虚構の神」
ハロー ジレッタ
「現実を覆う虚構のカーテン」
今ならわかる あれもこれも
きみと出会うためだったんだ
さあ楽しもう
世界中を 俺ときみで騙すんだ
俺ときみで ジレッタ

   * * *

世界中を 俺ときみで騙すんだ ジレッタ
世界が俺たちの前にひざまずく
世界を手玉に…… ジレッタ!

野望に目を輝かせ、ジレッタの成功を高らかに歌う門前
門前を祝福するかのように、金吹雪がきらきらと宙を舞う


<二幕へつづく>